一般的にブランド価値の高い会社と言われている会社は、紙やパッケージに関しての方針も明確に謳っている会社が多く出てきており、特にAppleに関しては Apple’s Paper and Packaging Strategy として詳細な方針書を出していて素晴らしい内容なのでその内容について紹介します。
Appleは環境に関する将来のゴールとして、地球から何も取らずに製品を作るということを目標にしています。それに伴って、製品とともに必ず必要となるパッケージや紙の利用に関して明確に方針を出しています。
具体的には以下の3つを方針にしています。
背景としては、1990年から2015年の間に3億エーカーの森林がなくなっていたり、管理された森林の認証であるFSCやPEFCの木が38%しかないといわれていたりという中でサステイナブルな森林利用ができなくなってしまっているという中でそのような方針を立てています。
まず、紙を効率的に利用するために、Paper Footprintとして、各製品や本社機能などで利用している紙の量を把握し、管理しています。そして単に紙の利用量ではなく、パルプの量で管理しています。紙の種類によって木・パルプの利用量は違ってくる? の記事でも紹介したとおり、紙には表面に塗られている薬品があったりするので、紙の量=利用している木の量ではないから、本来の木の利用量を把握するためにパルプの利用量で把握しています。
そしてその量を各製品単位で把握し、新しい製品を作る際にはより効率的な利用ができないかというのを検討しています。
上図のように、バージンパルプの量(Virgin Fiber)、リサイクルのパルプの量(Recycled Fiber)、プラスチックの量(Plastic)という区分で分けて把握しています。
こういった効率化するという方針があるため、各製品を作る際に、
なぜこの素材を、この量使う必要があるのか?
この素材である必然性があるのか、他の素材やデザインという選択肢は無いのか?
という根本的な問いかけを常にしているというのはどこも取り入れるべき考えなのではと思います。
しっかりと管理されている森林からの木材であることを示すFSCやPEFCの紙を中心に調達するようにしています。ただ、FSCやPEFCの紙だけだと足りない可能性もあることから、もう少しゆるいFSC管理木材やAppleによって認められた森林というのも許可しています。
また非木材の材料を使うという点についても重要なことが方針として書かれています。なお非木材の材料は、例えばバガス、ワラなど廃棄物から取れる紙などが含まれます。
これらの素材が通常の紙のリサイクルの流れに問題なく載せることができるか
という条件を満たせるもののみを使っています。多くの会社が木以外の材料ということだけでアピールできる飛びついてしまうことがありますが、しっかりリサイクルできるのかまで考える必要があります。
2番目の方針でFSCなどの認証材を使うのはいいのですが、その量が限られている中で、Appleが利用することで他の会社が利用できないということは本質的に求めることではないということで、そもそも森林自体をしっかり保持・復元していくことを目指しています。具体的には、アメリカで危険な状態になっている森林を買い取って、管理して復元できるような状態にしたうえで、正しく管理できる組織に売り、そのお金で別の森林を買うというサイクルを回しているWorking Forest Fundに参加しています。(Appleも参加しているWorking Forest Fundとは参考。)また中国でもWWFと一緒に活動をしています。
こういった形で、①地球から何もとらずに製品をつくるという大きなゴールを作る②各領域での本質的な方針を決める③実施する体制をつくる④各施策の実施というのが理想的な流れだと考えています。
参考資料:
Apple’s Paper and Packaging Strategy
仲川 文隆 伸和印刷株式会社代表取締役
環境問題改善へ貢献する会社を目指してインプットした内容を配信しています。
Twitter:@hitonakagawa
伸和印刷
https://shinwa-ins.co.jp