プラスチックが今よく話題になっていますが、プラスチックと地球温暖化の関連はあるのでしょうか。プラスチック製造に関わる二酸化炭素排出量について説明します。
プラスチックの生産量は世界で2015年で3.8億トンになります。そして、1964年の段階では1,500万トンしかなかったものがこの50年の間に24倍以上にも増えています(※1)
さらに今後の傾向としては、世界経済フォーラムや三菱ケミカルリサーチのリサーチによると2030年まで毎年3.8%、そのあと2050年まで毎年3.5%増えていくというデータもあります。(※2)
最近は海にある海洋プラスチックや、その影響によってマイクロプラスチックが人間の体内にも入ってくるといった問題がよく話題になっていますが、プラスチックは地球温暖化にはどれくらい影響があるのでしょうか。
プラスチックを作る際には石油や天然ガスなどが原料となり、石油であれば石油の精製過程でできるナフサから作られていきます。なので、石油などの燃料起源で発生する二酸化炭素の一定割合をプラスチックが占めていると考えることができます。
具体的にどれくらいの二酸化炭素が発生しているのかをボトムアップで全部調べるには情報が足りていないというのが現状なようで、ある程度仮定をおいて推定で出している数値が多いようです。
例えば世界経済フォーラムの資料(※3)によると、
「2012年で3億9000万トン」
のCO2が発生していると言っています。想定としては、プラスチック生産の半分は燃料の燃焼によるもので、それはIEAの燃料燃焼によるCO2発生量(※4)31.7億トンの約6%という想定で書かれています。また、天然ガスを使ったものや過程での電気利用によるCO2は含まれていないということなので、もっと多くなることが想定できます。
また別の資料でCIELのPlastic & Climate: The Hidden Costs of a Plastic Planetという資料(※2)においては、
「1MTのプラスチック生産によって1.89MTのCO2が発生している。2015年のプラスチック生産が3.8億トンなので、プラスチック生産による二酸化炭素発生量は7.2億トン」
といった数値になっています。
前に書いたペースで2030年まで毎年3.8%、2050年までは3.5%で増えていったとすると、下のグラフのように増えていきます。
現在全体で350億トン程度と考えると、2050年に2,800億トンまで増えてしまうという数字がかなり大きなものであることが分かると思います。
前述のCIELのPlastic & Climate: The Hidden Costs of a Plastic Planetの中ではある程度ボトムアップでプラスチックに関わる各工程での二酸化炭素排出の詳細も書かれています。プラスチックに関わる全体のフローとしては
があり、それとは別に海などに捨てられているプラスチックも影響しています。
石油を発掘する過程でのメタンの漏れや、燃料の燃焼、発掘過程でのエネルギー消費、パイプラインなどのための土地利用によるものなどの影響で2015年段階で1億800万トンは二酸化炭素が放出されています。
石油から精製されたナフサにさらに熱を加えてプラスチックの原料のエチレン・プロピレンにして、それをつなぎ合わせてポリエチレンにして、そこから必要な形に変えてなどすべての処理でエネルギーが必要で、それが1億8,000万~2億1,300万トンの二酸化炭素排出になると想定されています。
プラスチックは最終的にはリサイクルする、埋め立てる、燃やすなどの方法があります。それぞれでエネルギーが必要で、燃やす場合であれば、プラスチック生産量のう40%を締めるパッケージの分だけで590万トンの二酸化炭素が発生します。
こちらに関してはまだ研究され始めているところで、明確にはいえない状態ではあるものの、海などに捨てられているプラスチックが温暖化の観点でも大きな問題になるのではと言われています。
大きく分けると、
という2点が問題として考えられています。
プラスチックが熱や光の分解によってCO2やメタンなどを発し、その排出量は風化などによってプラスチックが細かくなればなるほど多くなってくるということが調べられています。
プランクトンに関しては、前提として植物プランクトンがCO2を吸収し、動物プランクトンがそれを食べて海の深くに潜ってCO2を深い海にためてくれるという流れがあります。海によるプランクトンが細かくなったプラスチックを吸収してしまうと、植物プランクトンの光合成量が45%減ったという実験結果も出ているようです。そして汚染された植物プランクトンを食べた同じく汚染された動物プランクトンは海の底に移動するペースが遅くなることも観測されています。
海は30%~50%の二酸化炭素を吸収していると言われている中で、その吸収能力がプラスチックによって下がってくるということが起きているとすると、温室効果ガスを減らすという目的を達成させるためにはかなり大きな問題になってくる可能性があります。
仲川 文隆 伸和印刷株式会社代表取締役
環境問題改善へ貢献する会社を目指してインプットした内容を配信しています。
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